最近『腸活』という言葉が話題になっていますが、腸の調子を整えるのに欠かせない成分の一つが「食物繊維」だという事を知っていましたか?
食物繊維には腸内細菌叢(ちょうないさいきんそう)の改善の他、食後高血糖の予防、血中コレステロールを下げるなど多くの効果が認められています。
今回は、そんな食物繊維の利点と摂取量を増やす工夫について解説します。
Contents
食物繊維を摂る利点
1.食後高血糖の予防
食物繊維は水に溶けると粘性が著しく上昇する特徴があります。小腸内容物の粘度上昇は、糖質等の食品成分や消化酵素の拡散を阻害し、酵素作用を緩慢にさせる効果があります。
つまり、消化・吸収を遅らせて血糖の急上昇を抑制します。
そのため、食物繊維は食事の前半に摂ることで腸管からの糖質や脂質の吸収を遅延させ、血糖値の上昇を抑制する効果を発揮できると考えられます。
海藻類・野菜・きのこ・豆類から先に食べるようにしましょう。
ベジ・海藻ファースト
2.腸内細菌叢の改善
食物繊維は大腸に到達して善玉菌の増殖を促進する食品成分でもあり、腸内細菌叢の改善が期待できます。また不溶性食物繊維は大腸内で水分を保持し軟便にするとともに排便を促進する作用があります。これらの性質により、便秘の予防や腸内細菌叢と関連性のある疾患の予防や改善が期待されます。
3.血中コレステロールの低下
食物繊維は、高粘性の溶液を形成し、栄養素やコレステロールの拡散を阻害します。
また、ミネラルや胆汁酸を吸着する作用があり、糞便と一緒に体外へ排出する効果もあります。
この性質により血清コレステロールを低下させる生理作用が期待されます。
食物繊維摂取量の目安
平成27年(2015)国民健康・栄養調査1)によると、男女計20歳以上の食物繊維摂取量は14.5g/日と低い値でした。
食物繊維目標量は、日本人の食事摂取基準2020年版3)により18~64歳男性21g/日以上、女性18g/日以上と設定されています。また、糖尿病の発症リスクと定量的解析を試みたメタ解析では、食物繊維の1日平均摂取量は20gを越えた時点から有意な低下傾向を示したとして、糖尿病における目標量は20g/日以上にすることが望ましい4)と示しています。 アメリカ・カナダの食事摂取基準では、成人では理想的には 24g/日以上、できれば 14g/1,000kcal 以上を目標量とすべきであると報告しています5)。
食物繊維10g/日未満では大腸がんのリスクが高まる
食物繊維摂取量と大腸がんリスクを検討した研究報告書6)をみると、食物繊維を多く取ったとしてもそれだけ予防効果が期待できるわけではなさそうですが、極端に少ない人(食物繊維10g/日未満)では大腸がんリスクが高くなる可能性があることはいえます。
食物繊維をあと5g増やす工夫
食物繊維は、未精製の穀類・大豆・野菜・海藻・きのこ・芋類、こんにゃくなど、特定の植物性食品に多量に含まれていますので、それらの積極的な摂取がすすめられます。
<食物繊維摂取量を増やすポイント>
①未精製の穀類を積極的に取り入れる(玄米・雑穀米・全粒粉パンなど)
②大豆や大豆製品、きのこ・海藻類を使った副菜を1日の中で1~2品増やす(納豆1パック、五目煮豆等)
食物繊維を多く含む食品
まとめ
・食物繊維の保健効果は、
◆食後高血糖の予防
◆腸内細菌叢の改善
◆血中コレステロールを下げる
以上3点が主だった効果です。
そのため生活習慣病予防のために積極的な摂取を心がけることが勧められます。
・食物繊維は、未精製の穀類・大豆・野菜・海藻・きのこ・いも類・こんにゃくなど植物性食品に多く含まれる。
食物繊維は自分が思っているより摂取しにくい栄養素です。
保健効果3点を見るだけで分かるように、とても重要な栄養素なので意識して食生活を見直してみましょう。
ただ、無理をするとストレスになり逆効果なので自分が無理なく出来る範囲で行動しましょう。
監修:健診会東京メディカルクリニック
管理栄養士 田口 絢子
参考文献
1) 日本人の食事摂取基準 2020
https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/000586553.pdf
2) 平成27年 国民健康・栄養調査結果
https://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-10904750-Kenkoukyoku-Gantaisakukenkouzoushinka/kekkagaiyou.pdf
3) 令和元年 国民健康・栄養調査結果
https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000687163.pdf
4) 食物繊維摂取と大腸がん罹患との関連について
https://epi.ncc.go.jp/jphc/outcome/286.html
5) 南江堂:糖尿病診療ガイドライン 2019
6) 「日本人の食事摂取基準(2020年版)」策定検討会報告書
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_08517.html